ルチアーノ・パバロッティ

僕が大学生の時の話。10年ぐらい前の話。古着屋で、格好いいティシャツを見つけた。髭の男が大きくプリントしてある黄色いティシャツ。その人物が何をやっている人なんて全く気にしなかった。何か文字が書いてあったけど、読んだことがなかった。とにかく、格好が良かったから着ていた。
その頃は貧乏で、ただでジュースとお菓子が食えて、しかも図書券(その頃は図書カードでは無かった)が貰えると言うことで、二週間に一度献血に通っていた。成分献血だ。400mlだと三ヶ月に1回だから効率が悪い。献血行った帰りにくだらない本を買うのが楽しみだった。献血に通いすぎて市長に表彰されたぐらいだ。
ある日、いつものように暇つぶしに献血に行ったら、若い看護婦さんに、お気に入りの黄色いティシャツを見られながら「好きなんですか?」と尋ねられた。勿論、お気に入りのティシャツなので「ええ、好きなんですよ。」と答えたら、色々とオペラの話をされた。よく分からずに取りあえず相づちを打っていた。
後になって、始めたばかりのインターネットで調べてみたら、そのティシャツの彼は、3大テノールの一人だった。彼の素晴らしいと言われる歌は聴いたことがないし(聴いたことぐらいあるかもしれないけど彼と認識したことはない)、お気に入りのティシャツはいつの間にかどこかに行ってしまったけど、彼のこと大げさだけど一生忘れないと思う。色々な場面でお世話になった。ありがとう。

ご冥福を祈ります。



しかし、今思うと、あれは何のティシャツだったんだろう?何かのイベント用?オペラ歌手がプリントされているなんて凄いな。イタリア製?まぁ、いいや。今度機会があったら聴いてみよう。