健康診断で見た可愛い女の子と酸っぱいだけの昔話。


 今日、年に1回の健康診断を受けて来た。そこに可愛い女の子がいた。



 ペンタゴンのような形をした古くさい病院で、外壁に沿って診断部屋があり、流れ作業で診断を受ける。とても効率が良い。ラインに乗ったみたいだ。まぁそれは良いとして、一人で受けたんだけど、同じ順番で同じように診断を受ける女の子がいた。以前受けたときには、おじさんとおばさんしかいなかったので、何だか新鮮な感じ。受付前にはラフな格好の人たちに囲まれて一人だけその女の子はスーツを着てソファに座っていたので目立っていた。


 黒いほんのちょっとウェーブが掛かった長い髪を後ろで一つに縛っている、清潔感のある女の子。昔の奥菜恵の似ていたかも。診断中は、上は薄い緑の病院服で下はスーツのスカート、なんだか、シチュエーション的にエロい。一緒に診断を受けている時も(俺が勝手に一緒に回っていると思っているだけだけど。)ソファが沢山空いているのに、俺の横にちょこんと座る感じ。(これまた勝手な勘違い。)姿勢が正しくてとても美しく見えた。みんながソファの背もたれに寄りかかっているのに、その子だけピシッとしているの。目立つ。姿勢がいい人は性格まで良さそう。診断表がチラッと見えたら(のぞいたら)生年月日が昭和62年だったから21歳ぐらい。ちょっと気になっちゃったので、チラチラと見て女の子を見て血圧と脈拍を異常値まで上げていた時にふと、中学時代を思い出した。


 あれは、今から15年ぐらい前の中学三年生の時の部活の終了後。大会かなにか忘れたけど、市民体育館での出来事だった。同級生の女の子に、「○○ちゃんが(一つ下の後輩)話があるって。」と言われてロビーに呼び出された。ソファのある所。ソファで俺の横に姿勢を正してちょこんと座っていた。いつも姿勢が正しく凛としている子だった。暫く無言が続いて「ずっと好きでした」なんて漫画のような台詞で告白された。当時も友達とバカでくだらない話しかしていないようなどうしよう無い中二病の男子にはなんて返事を返して良いか解らなかった。正直に言って好きではなかったけど、気の利いた台詞ぐらいは返してあげるべきだった。勇気を持って言ってくれたのだから。でも、その当時はなんて言って良いのか解らなかった。なんかよく分からない言い訳の様なモノが頭の中を回っていた。何から口に出して良いのか分からずずっと沈黙が続いた後、「それじゃ、頑張ってください」と言って、悲しい顔でも、笑顔でもない顔をして後輩は帰っていった。


 その後は、あんまり憶えていないけど、待たせていた同級生のバカな男子と一緒に自転車で帰った。帰り道に待たせたことについて特に何も尋ねられずにいつも通りバカな話をしながら。俺を呼び出した女の子からも特に何も聞かれなかった。いつも通りの対応。女の子のネットワークじゃ知らない訳無いのに。


 暫く経った後は、その後輩の女の子とはその後も普通に会話をしていた。年賀状を貰ったりもした。でも、特に進展は無かった。というか、俺が食い止めていたんだろうな。俺が高校に行った頃に、そのバカな男子の友達からあの体育館での出来事を知っているの知らないのか解らないけど、「そう言えば、○○さん、△△ってやつと付き合っているんだって。」という噂話を聞いた。△△はどうしようもないDQN。よく知らないけど。「ええ、うっそ。あんなやつと?」って言いたかったけど、「へぇ、そうなんだ。」としか言えなかった。


 あの、体育館での会話は多分「うん」とかって1回ぐらい言ったと思うけど、もう少し、勇気を持って言葉を発していたら人生が今とは違うように変わっていたんだろうなぁ。リア充で勝ち組になっていたのかもしれないなぁ。なんてバカみたいな事を、病院のソファで女の子をチラチラ見ながら考えていた。



 「そんで結局、このダラダラした話のオチは何?結論は?何が言いたいの?」なんて事を言われたら何も言い返せない、中学三年生の体育館の時の俺の様になってしまう話。ああ、無理矢理こじつけるとすれば、無口は得をしないし、情報は整理してアウトプットしろ、とにかく行動しろ、って事かな。でも、別に今更反省なんてする気はない。開き直り。でも、今だったらもう少し気の利いた言葉がクチから出てくるかもしれない。大人になったし。